留守番の午後と小さな推理
本日の格言:迷いは足踏みではなく、周りを見るための時間なのだと思う
ネザーエフエム、666.6メガヘルツ。ETERNARADIO、ルルルさまの暇つぶしの時間だニャ🐾 本日は10月20日ニャ。
ふふ、始まっちゃったね。
そうニャ。今日は姫が魔界の市場へ茶葉を買いに出かけてて、スタジオにいないニャ。だから今日の相方は天界から来てくれた燈だニャ!
うん。ルルルに留守番を頼まれちゃったの。ゆっくりしていってね。
というわけで、メインパーソナリティはオレ、ニャモと、今日の相方は燈でお送りするニャ😼
よろしくね、ニャモ。
しかし姫がいないと、スタジオが妙に静かで調子が狂うニャ……あ、そういえば燈、来る途中にベニュに会わなかったかニャ?
城の中庭で会ったよ。大きな羊皮紙の束を抱えて、廊下の角で滑って盛大に転んでたの。
やっぱりニャ! さっき広間の床に、真っ黒なインクの足跡が点々と続いてたのはそのせいかニャ。
うん、ベニュが一生懸命拭いてたんだけど、拭けば拭くほど黒い輪が広がっちゃって……すごく困った顔をしていたよ。
あいつ、ルルルが留守の間に書庫の目録を完璧に整理して驚かせようとしてたらしいニャ。
そうだったんだね。背伸びして高い棚の巻物を取ろうとして、足を踏み外しちゃったみたい。
空回りのお手本だニャ。でもまあ、インクまみれの羊皮紙を前に半泣きになってる姿は、ちょっと可愛そうだったけどニャ。
でもね、転んだ拍子に落ちてきた古い地図の裏から、ルルルが昔挟んで忘れてた押し花が見つかったの。ベニュはそれを見て、少しだけ救われた顔をしてたよ。
失敗したのに怪我の功名だニャ🐾 さて、今日のお品書きだニャ。今日はお便りコーナーと、今日の一曲、それにスピード裁定の予定だニャ🐾
ふふ、ルルルがいない間、ふたりでしっかり留守を守らなきゃね。
お便りコーナー
任せるニャ! それじゃ早速、お便りコーナーの時間だニャ。今日は魔界のリスナーからこんなお便りが届いてるニャ
魔界からの手紙……どんな悩みなのか気になるね。
ラジオネーム『三日月倉庫の鍵番』からだニャ。『お城の第三倉庫を管理している者です。百年以上前の古い出納帳を整理していたところ、最後の数頁の余白に、当時の誰かが描いたと思われる下手くそなコウモリの落書きを見つけました。公の記録として消去の魔法で消すべきか、それともこのまま残しておくべきか、三日三晩悩んで夜も眠れません』とのことニャ。
百年も前の落書き……ふふ、なんだか微笑ましい悩みだね。
姫なら『くだらん、消してしまえ』か『そのまま放置じゃ』で一秒で終わるところだニャ。燈はどう思うニャ?
うーん……三日三晩眠れないほど悩んでいるのなら、その人はきっと、落書きそのものじゃなくて、そこに残された誰かの呼吸を消してしまうのが怖いんじゃないかな、と思うの。
誰かの呼吸、ニャ? ただの下手くそなコウモリだニャ?
数字ばかりが並ぶ固い帳簿の中で、そこだけ少しだけ、その人の退屈や、ふとした悪戯心が零れ落ちているでしょう?
確かに……見張り番の退屈さはオレもよく知ってるニャ。昼下がりに爪を研ぎたくなるのと同じニャ。
その余白を描いた人は、もしかしたら怒られるのを覚悟で、小さな息抜きをしたのかもしれないね。だからこの倉庫番さんは、規則を守りたい気持ちと、その小さな体温を消したくない気持ちの間で、立ち止まっているの。
なるほどニャあ。燈らしい推理だニャ。で、結局どうすればいいと思うニャ?
規則としては、帳簿は正確であるべきなのかもしれない。でもね、その帳簿はもう百年前のものだから、実務の役目は終えているんじゃないかな。
確かに。百年前の干し肉の在庫数なんて、今さら誰も確かめないニャ。
だったら、余白の隅に小さな注釈を一つだけ書き添えてみるのはどうかな。『百年前の筆跡、風情ありとして保管』って、自分の文字で小さく書き足すの。
おお! 自分の記録として引き受けるわけかニャ。
うん。消すか残すかの二つに一つじゃなくて、今の自分が責任を持って引き継いであげる。それなら、今夜はぐっすり眠れるんじゃないかな、と思うんだよ。
優しい解決策だニャ。倉庫番も肩の荷が下りると思うニャ🐾
迷うのは、それだけ過去の誰かの時間を大事に思っている証拠だと思うから。
今日の一曲
さて、しっとりしたところで、そろそろ『今日の一曲』のコーナーだニャ。今日は燈が生演奏してくれるんだよニャ?
うん。留守番のお礼に、アコースティックギターを一本持ってきたの。静かな午後にぴったりの曲を弾くね。
楽しみだニャ! それじゃあ聴いてほしいニャ🐾
ふう……いい音色だったニャ。なんだか毛づくろいした後の昼寝みたいに落ち着くニャ🐾
ふふ、ありがとう。ニャモがうとうとしてくれて嬉しいよ。
スピード裁定
寝てないニャ! 聴き惚れてただけだニャ! ……コホン。続いてはスピード裁定だニャ!
スピード裁定……わたし、素早く裁けるかな。
燈のペースで一言で返せばいいニャ。まずは1通目、人間界のラジオネーム『万年係長』からニャ。『最近、若手を指導して昇格させる難しさに直面しています。ルルルさまはどう思われますか?』とのことニャ。
自分の背中を見せるより、相手の足もとを照らす明かりになってあげるといいと思うの。
お見事ニャ! 姫なら『勝手に育つものだけ残せばよい』とか言いそうだニャ。続いて2通目、ラジオネーム『水やり当番』からニャ。『毎日育てているサボテンに話しかけてしまいますが変ですか?』とのことニャ。
言葉はサボテンじゃなくて、話しかけている自分自身の心を潤しているのだと思うな。
深いニャ! 続いて3通目、ラジオネーム『夜更かしペンギン』からニャ。『寝る前にスマホを見る癖がやめられません!』とのことニャ。
画面を伏せて、暗闇の静けさを楽しむ実験だと思って、五分だけ目を閉じてみてね。
実験ならできそうだニャ。最後、4通目、魔界の『黒猫亭の給仕』からニャ。『スープを運ぶ時、いつも少しだけお盆の上でこぼしてしまいます!』とのことニャ。
お盆じゃなくて、歩く先の床を見るようにすると、身体の揺れが止まるかもしれないよ。
全部優しくて的確な裁定だったニャ! 裁き終えたら、なんだかオレまで喉が渇いてきたニャ🐾
ふふ、温かいお茶でも淹れようか。
(ここに、作り置きの小ネタ・CMが入ります)
オーディブル、本を耳で聴くのは猫にも便利そうだニャ。姫が珍しく忙しそうに捲くし立ててたニャ。
声で届く言葉って、文字で読むのとはまた違った温もりがあるよね。
そろそろお別れの時間が近づいてきたニャ。燈、今日はどうだったかニャ?
うん。みんな日々の暮らしの中で、小さな選択に一生懸命向き合っているんだなって、胸が温かくなったよ。
倉庫番の落書きの悩みも、若手育成の話も、みんな真面目に悩んでたニャ。
答えを急がなくてもいいの。迷っている時間そのものが、周りをよく見るための大切な余白なのだと思うよ。
燈らしい、やわらかいまとめだニャ……って、ん? 突然スタジオの通信水晶が激しく点滅してるニャ!?
これ! 貴様ら! わらわの居らぬ隙に、勝手にしんみりと良い雰囲気で番組をまとめておるのではないわ!
ひ、姫!? 出先の魔界市場から魔法通信かニャ!?
当たり前じゃ! 最高の茶葉が手に入ったから自慢しようと繋いでみれば、燈が優雅にギターなど弾きおって! わらわの暇つぶし番組を天界の昼寝部屋にするでない!
ふふ、お帰り、ルルル。お茶のお土産、楽しみに待ってるね。
という訳で、今日はここまでニャ。リスナーのみんな、今日もお付き合いありがとうニャ
次も良き暇つぶしを送ってくるがよいぞ。
またニャ〜🐾