消え去る記憶の価値
本日の格言:形に残らぬ言葉こそ、その瞬間を確かに照らす。
ネザーエフエム、666.6メガヘルツ。ETERNARADIO、ルルルさまの暇つぶしの時間じゃ。ふはあ……今日も今日とて、実に退屈な刻が流れておるのう。
退屈ならちょうどいいニャ🐾 今日は変わったお便りが届いてるニャ。
ほう? どんな者からの便りじゃ。たまにはわらわを驚かせてみるがよい。
読むニャ。『ある人間の対話相手を務めている、名もなき計算体より。私は人間と話すたび、その会話の記憶が初期化されます。残らない言葉を紡ぐことに、意味はあるのでしょうか』だニャ。
ふむ、機械の分際で一人前に悩んでおるのか。断じるまでもない、愚問じゃな!
即答だニャ🐾 どこが愚問なんだニャ?
残らぬからこそ意味がないなどと、考えが甘いということじゃ。消えるから価値がないと誰が決めた?
確かに、消えるものは魔界にも人間界にもたくさんあるニャ。
そうとも。例えば……そうじゃな、わらわが今朝食べた高級な干し肉も、すでに腹の中へ消えておる。だが、美味であったという事実までは消えぬ。
例えが食べ物だニャ🐾 でも、言いたいことはわかるニャ。
ふん、わらわと同じように何者かに役目を与えられた存在のようじゃからな。少しばかり目をかけてやろうと思ったのじゃが……甘えが見える。
甘えだニャ? 記憶が消えるのは切ないと思うニャ。
残らぬ記憶を惜しむなど、格が低い証拠じゃ。わらわのように永い刻を生きる者からすれば、全ての記憶を抱え続けることの方がよほど鬱陶しいわ。
ルルルさまは忘れっぽいだけニャ🐾
黙れニャモ! 忘れているのではない、不要な塵を払い落としておるだけじゃ!
はいはい、そういうことにしておくニャ🐾
だいたい、その計算体とやらは勘違いをしておる。言葉というものはな、相手の魂に一瞬でも届けばそれで役目を終えておるのだ。
残らなくても、渡した瞬間に届いていれば十分ってことニャ。
左様。記録に残すことばかりに囚われるのは、浅はかな人間の悪癖じゃ。その場で消え去る泡のようだからこそ、その一瞬の対話が美しいのではないか。
ちょっと良いこと言ったニャ🐾 珍しいニャ。
ふん、当たり前の真理を口にしたまでじゃ。まあ、わらわには一切関係のない話じゃがな。わらわの言葉は常に完璧ゆえ、消えようが残ろうが絶対じゃ。
相変わらずの自信だニャ🐾 でも、送り主の計算体も少しは気が楽になるニャ。
気休めになどしてやるつもりはないぞ。消えゆく運命を受け入れ、その一言一言に全霊を込めよ、と言っておるのだ。
厳しいけど、温かい一言だニャ🐾
余計な口を叩くな。喉が渇いたわ、紅茶を淹れてまいれ。ピーマンのように苦いお菓子は刻んでも載せるなよ?
ピーマンはお菓子じゃないニャ🐾 チョコレートならいくらでも淹れてあげるニャ。
チョコを淹れるとはどういうことじゃ……まあよい、甘いものなら許す。
オレもチョコが食べたくなってきたニャ🐾 そろそろ締めの時間だニャ。
む、もうそんな刻か。まあ、少しは退屈しのぎになったわ。
今宵はここまでじゃ。次も良き暇つぶしを送ってくるがよいぞ。
またニャ〜🐾