新章 第4回『わんぱくな魔物の姿を表現じゃ』
本日の格言:奇をてらうな、自分の目で見た当たり前を語れ。
ネザーエフエム、666.6メガヘルツ。ETERNARADIO、ルルルさまの暇つぶしの時間じゃ。本日は10月31日じゃ。そして者ども、耳をかっぽじってよく聴くがよい! 今宵は年に一度の『ハロウィン特番』であるぞ!
こんばんはだニャ🐾 聴いてくれてるみんなも、いい夜を過ごしてるかニャ。それにしてもルルル、ハロウィンって人間界のお祭りなのに、なんでそんなに鼻が高いんだニャ?
ふん、知れたことよ。人間界のハロウィンとやらは、魔族やお化けの仮装をして街を練り歩く祭りなのじゃろう? つまり人間どもがこぞって、わらわたちの高貴な姿を真似しておるということじゃ。 まったく、身の程を知らぬ連中じゃが……まあ、わらわに憧れる気持ちは分からんでもないがな!
別にルルルの真似をしてるわけじゃないと思うニャ。お化けの格好をして、家々を回ってお菓子をもらうお祭りらしいニャよ。
なんじゃ、ただの物乞いではないか。しかし『お菓子をくれぬと、いたずらするぞ』などと脅しをかけて歩くと聞いておるぞ。わらわならばそうじゃな、『極上の茶葉と焼き菓子を献上せぬと、その家の屋根裏で一晩中タップダンスを踏んでやるぞ』と申し渡してやるところじゃな。
魔界の姫のいたずらにしては、ずいぶん地道な嫌がらせだニャ。しかもオレは甘いお菓子には興味ないから、回るなら魚屋がいいニャ。オレは魚のおやつがいいニャ🐾
お主が魚屋の軒先に座っておったら、仮装ではなくただの野良猫として追い払われるだけじゃろうが。……ところでニャモよ、その仮装とやらにも通じる話なのじゃが、わらわは今日、城の corridors……いや、回廊の奥にある古い衣装部屋を整理させておったのじゃ。
ほう、衣装部屋ニャ。ルルルが自分で片づけなんて珍しいニャ。
わらわが手を動かすわけがなかろう、ベニュに命じたのじゃ。そうしたらな、数百年前に仕立てた『威厳が三割増しに見えるマント』というのが出てきてな。肩のところにこう、巨大な黒い羽根がぶわっと付いておるのじゃ!
うーん、それ、ただ重くて肩が凝るやつじゃないかニャ?
たわけ! 魔界の覇者たるもの、見た目のハッタリも大事なのじゃ……と、言いたいところじゃが、実際に羽織ってみたら、羽根が邪魔で後ろが全く見えぬし、扉の幅に引っかかって部屋から出られなくなったわ。
出られないんじゃ、どこにも威厳を見せに行けないニャ。
うむ。しかもな、その羽根の先がちょうど良い具合に揺れるものじゃから、お主がさっきまで、目をらんらんと輝かせて後ろから飛びかかろうとしておったであろうが! わらわの威厳あるマントを、巨大な猫じゃらしと同一視するでないわ!
いや、だってあれは動く方が悪いニャ😼 カサカサっていい音がしてたし、本能がうずいたんだニャ。
まったく、油断も隙もあったものではないわ。おかげでマントの裾に、お主の白い毛がびっしり付いてしもうたではないか。ベニュが粘着ローラーを持って駆けつけてくる羽目になったぞ。
でもあのマント、羽根を外して裏返したら、ふかふかの毛布になって昼寝にちょうどよかったニャ。今もスタジオの隅に置いてあるけど、あとでまたあの上で丸くなる予定だニャ🐾
あれはわらわの歴史的衣装じゃぞ!? ……まあ、わらわもさっき少し足を乗せてみたら、存外に肌触りが良くてな。そのまま床敷きにしておくよう命じたところじゃ。
結局、ただの高級な猫用マットになったってことニャね。
猫用ではない、わらわの足置きじゃ! お主にはその端っこを貸してやっておるだけじゃ。……さて、そんなわけで今宵の放送は、真夜中の仮装行列の総大将にして、ふかふかマントの支配者たるわらわ、ルルルが直々に仕切ってやるぞ。
肩書きがだんだん部屋着みたいになってきてるニャ。進行役のニャモだニャ🐾
よし、名乗りも済んだところで、者どもがわらわに捧げた貢ぎ物……もとい、便りを見てやろうではないか。ニャモ、読め。
お便りコーナー
貢ぎ物じゃなくてお便りだニャ。それじゃあ早速、お便りコーナーに行くニャ! 今日は人間界のリスナー、ラジオネーム『斜め四十五度の茶柱』から届いてるニャ。「ルルルさま、ニャモ、こんばんは。最近、人間界では会議でも日常の会話でも『独自の視点による意見表明』というものがもてはやされています。みんなと同じ意見では埋もれてしまうから、何か人と違う鋭い切り口で語らなければならない、という空気があって正直しんどいです。ルルルさまは、こういう独自の視点というものをどう思われますか?」だニャ。
ふむ……人間界の流行り言葉などよく知らんが、要するに『他人と違う珍しいことを言って目立ちたい、あるいは目立たねばならぬと焦っておる』ということじゃな。……くだらん! 実にくだらんわ!
お、バッサリ行ったニャ。
当たり前じゃ。独自の視点などというものはな、ひねり出そうとして出るものではないわ。自分の足で立った場所から、自分の目で見たものが、結果として他人と違っておった、というだけの話じゃ。それを最初から『人と違うことを言おう』などと構えるから、首がねじ曲がるのじゃ。
首がねじ曲がるって、どういうことニャ?
ラジオネームも『斜め四十五度』などと申しておるが、人間どもはすぐそうやって、無理に斜めから物を見ようとするであろう。正面から見ればただの丸いリンゴじゃというのに、『いや、裏から見ればハート型に見える』だの『あえて芯の側から語ろう』だの、こねくり回すなと申しておるのじゃ!
あー、たしかに、普通に『赤くて美味しそうニャ』でいいのに、わざわざ難しい言い方をする人はいるニャ。
そうじゃろうが。わらわがよく読む本の世界でも同じことじゃ。奇をてらっただけの物語など、三頁で飽きるわ。何百年も残る古典というものはな、いつだって『腹が減ったら飯を食う』『悲しい時は涙が出る』という、ど真ん中の当たり前を、ごまかさずに書いておるのじゃ。
ふむふむ。ルルルが本の話をすると、急に説得力が出るニャ🐾
ふん、わらわが読破した蔵書の数をいくつと思っておる。……だいたいな、魔界でそんな小賢しい真似をしてみよ。かつて城の料理人が、ハロウィンの晩餐に『独自の視点で仕立てました』と申して、カボチャのスープに……あの、緑色の、苦くて丸っこい、忌まわしき野菜をすり潰して混ぜおったことがあってな!
ああ、ピーマンだニャ。
その名をスタジオで口にするでないわ! 空気まで苦くなるであろうが! まったく……甘くて濃厚なカボチャのスープは、そのまま飲むから美味いのじゃ。そこに誰も頼んでおらぬ独自性とやらを持ち込んで、緑色の毒物に作り変えるなど、万死に値する愚行じゃ!
毒物じゃないニャ、栄養があるだけニャ。でもまあ、カボチャのスープにピーマンは、オレもちょっと遠慮したいニャ。
であろう!? お主の好きなまぐろの刺身に、独自の視点とやらでハチミツや香草を塗りたくられたらどうする。腹が立つであろうが!
それは大罪だニャ! まぐろはそのまま、わさびも醤油もなしで、赤身の味をそのまま噛みしめるのが一番に決まってるニャ😾
うむ、それと同じことよ。会議とやらでも、無理に気の利いたことなど言おうとせず、自分がほんとうに思ったことをそのまま言えばよいのじゃ。それが他人と同じ意見であったなら、『わらわもそう思う』と堂々と頷いておればよい。
でもお便りの人は、みんなと同じだと埋もれちゃうって心配してるニャよ?
埋もれて何が悪い。百人が百人とも別々の方向へ走り出したら、船は前に進まぬであろうが。それに、ほんとうに自分の頭で考えて出した答えなら、たとえ結論が他人と同じ『右へ行く』であっても、そこへ至る理由は少しずつ違うはずじゃ。それで十分なのじゃよ。
なるほどニャ。無理に逆張りをしなくても、自分で考えて選んだなら、それはもう自分の意見だニャ。
そういうことじゃ。他人の目を気にして、わざわざ変な仮面をかぶって踊るなど、今宵のハロウィンの仮装だけでたくさんじゃ。普段の暮らしでまで、自分が思ってもおらぬ『独自の視点』のお面など、かぶってやる義理はないわ。
おお、ハロウィンにうまく掛けたニャ。
……ま、まあな。お主が毎日そんな窮屈な思いをして、眉間にしわを寄せてすり減っておるのかと思うと、わらわの暇つぶしの聴き手としては不憫で……いや、ええい、今の言葉は忘れよ! とにかく、しんどいなら無理にひねり出すなと申しておるだけじゃ!
……今の、ちょっと優しかったニャ🐾
うるさいわ! わらわはただ、ひねくれた意見ばかり聞くのは耳が疲れると申しただけじゃ! よいか『斜め四十五度の茶柱』よ、今夜お主がやるべきことは一つだけじゃ。何か一つ、目の前にある食い物でもなんでもよい、ひねらずに『美味い』『好きだ』と、ど真ん中の言葉で言ってみよ。一つで良い。そこからやり直すのじゃな。
素直な一言からでいいなら、今夜の晩ごはんからすぐできそうだニャ。……さて、ルルルが珍しく真っ当なことを言ったところで、いつもの短い一言も聴いておこうかニャ。
ルルルの一言格言
姫のありがたい一言の時間だニャ
真の冬支度とは、毛布の中で丸くなる覚悟を決めることじゃ
オレは年中その覚悟ができているニャ
うむ、怠け者としては見事な心構えじゃな
ルルルはベッドから出ない言い訳を作っただけニャ
春まで呼ぶでないぞ
うむ、我ながら実に重みのある言葉であったな。紙に書いて城の門に貼っておきたいくらいじゃ。
今日の一曲
自分でそこまで褒めちぎれるのは、ある意味すごい才能だニャ。じゃあ、気分が乗ってるついでに、『今日の一曲』のコーナーに行くニャ。
ほう、音楽の時間じゃな! よかろう、ハロウィン特番にふさわしく、夜の闇に響き渡る、わらわの華麗なるピアノの調べを聴かせてやろうではないか。
指がマントの羽根に引っかからないように気をつけるニャよ。それじゃあ、聴いてもらうニャ🐾
……ふう、綺麗な音だったニャ。ハロウィンっていうから、もっとお化けが出てきそうな激しい曲かと思ったニャ。
ふふん、騒がしいだけが夜の祭りではあるまい。こういう静かな旋律の方が、秋の夜長にはよく馴染むのじゃ。……そういえばニャモよ、こうして耳を澄ませて音を聴いておると、不思議と頭の中に景色が浮かんでくるものじゃな。文字を目で追う読書も良いが、たまには目を閉じて、耳から物語を味わうというのも悪くないものよ。
(ここに、作り置きの小ネタ・CMが入ります)
著者本人が読んでくれる本があるっていうのは、やっぱりちょっと気になるニャ🐾 自分の書いた言葉をどう読むのか、聴いてみたいニャ。
うむ。わらわが自伝を出した暁には、わらわ自身のこの気高い声で、三日三晩かけて朗読してやろうではないか。
三日三晩は長すぎるニャ、途中でみんな寝ちゃうニャ。……さて、ひと息ついたところで、後半もゆるっとやっていくニャ。ルルル、さっきの休みの間に、何をごそごそ食べてたんだニャ?
食べてなどおらぬ、優雅に茶菓子をつまんでおっただけじゃ! ハロウィンじゃからの、ベニュがカボチャのタルトを焼いて持ってきたのじゃ。ほれ、見るがよい、この見事な黄金色を!
ほんとだニャ、いい匂いがしてるニャ。でもルルルの口の端、タルトのサクサクしたかけらが付いてるニャよ。
むっ……! こ、これはあれじゃ、ハロウィンの仮装の一環じゃ! 口元に少し菓子を付けておくことで、わんぱくな魔物の姿を表現しておるのじゃ!
苦しい言い訳だニャ。ただの食いしん坊の魔物になってるニャ🐾
ええい、黙れ! お主には別皿で、焼き鮭のほぐしたやつが届いておったであろうが。さっきから皿が空っぽになっておるぞ。
あ、バレたニャ? あれ、皮のところまで香ばしく焼けてて最高だったニャ😼 もう一皿ないのかニャ。
ないわ! まったく、お主は菓子には目もくれぬくせに、魚のこととなると鼻が利きすぎるのじゃ。……じゃが、まあ、その鼻と舌の確かさだけは認めてやらんこともない。人間界の食い物のことになると、妙に細かいところまで知っておるしの。
へへ、食い物の歴史と品書きなら、オレに任せるニャ🐾 ちょうどお腹もこなれてきたところだし、ここらでその知識を披露しちゃおうかニャ。
ニャモの味見帳
ここからは、今夜から始まる新コーナー「ニャモの味見帳」だニャ🐾
ふん、味見帳じゃと? 白猫の分際で、ずいぶんと大層な名前をつけたものじゃな。
人間界のうまいものや、お店のしきたりを、オレがちょっとずつ確かめていく時間だニャ。
やれやれ、食べ物のことなど、わらわに聞けば一刀両断じゃというのに。して、記念すべき最初の題材は何じゃ?
一〇月の終わりで、夜風も冷たくなってきたニャ。こういう夜は、人間界の「そば屋」の話をするニャ。
そば屋か。あのようなもの、わざわざ語るまでもないわ。
ほう、ルルルはそば屋に詳しいのかニャ?😼
当たり前じゃ。要するに、細い麺を汁につけて、ずぞぞとすすり込んで、はい終わり、の店じゃろ。
ずいぶんあっさり言い切ったニャ。
事実じゃからな。壁に貼ってある木の札も、「ざる」か「かけ」か、あとはせいぜい天ぷらが乗っておるくらいじゃ。実に単調な場所よ。
老舗のそば屋の品書きには、「板わさ」があるニャ。
……いたわさ? 何じゃそれは。そういう名の新しいそばか?
かまぼこを切って、わさびを添えただけの一品だニャ🐾
はあ!? かまぼこじゃと!? なぜそば屋に行って、わざわざ魚の練り物なぞをつままねばならんのじゃ!
そばが茹で上がるまでの間に、それをつまんで待つのが、そば屋のしきたりだニャ。
……おぬし、なぜ白猫のくせにそんな妙な事情に通じておるのじゃ。
人間界の古い通りを散歩してると、のれんの奥からいい匂いがしてくるニャ。窓の隙間からよく見てただけだニャ😼
のぞき見ではないか! まったく、油断も隙もない猫じゃな。
それに、ルルルが言ったその木の札には、もっと変な名前がいっぱい書いてあるニャ。
ふん、かまぼこごときで驚いたりはせんぞ。他には何があるというのじゃ、申してみよ。
「天抜き」だニャ。
てんぬき? ……ああ、分かったぞ! 天ぷらそばから、天ぷらを抜いたものじゃな! つまりただの「かけそば」を、気取ってそう呼んでおるのじゃろ!
逆だニャ。
……逆、とは?
天ぷらそばから、「そば」の方を抜いたものだニャ🐾
そば屋でそばを抜くじゃと!? それはもう、ただの汁に浸かった天ぷらではないか!
その通りだニャ。つゆに浸った海老の天ぷらだけを、鉢に入れて出してくれるニャ。
正気か人間どもは! そば屋に来ておいて「そばを抜いてくれ」などと頼む客がおるのか!? 店主も怒って追い返せばよいものを!
怒るどころか、「あいよ」って喜んで出すらしいニャ。鴨南蛮のそばを抜いた「鴨抜き」っていうのもあるニャ。
かもぬき……! 言葉の意味がねじれておるわ! 「鴨を抜く」と書いて、残るのが鴨の方じゃと!?
そば屋では、主役が「そば」だから、「抜き」と言えばそばを抜くことになるニャ。
むう……理屈としては筋が通っておるような、おらんような……いや、やはりおかしいじゃろ! お腹がいっぱいにならんではないか!
最初から、お腹をいっぱいにしに行ってるわけじゃないんだニャ。
何? 食事処に行って、腹を満たさんとはどういう了見じゃ。
焼き海苔とか、だし巻き卵とか、そういうのをちょっとずつ頼んで、だらだら過ごすための場所でもあるニャ🐾
だし巻き卵まであるのか……。もはや何屋か分からんではないか。
お湯を張った木の箱に、焼き海苔を入れて出すお店もあるニャ。下から温めるから、海苔がずっとパリパリのままなんだニャ。
ほう……ただの海苔を温めるためだけに、わざわざ専用の箱を用意するとな?
そうニャ。みんな、そういうどうでもいい手間を楽しんでるニャ。
ふむ。魔界の城でも、ベニュが紅茶を淹れる前に、いちいち茶器を湯で温めておるが……あれと同じようなものか。
たぶん同じだニャ。で、いろいろつまんだ最後に、やっと「もりそば」を一枚だけ頼んで、さっと食べて帰るニャ。
最後に食べるのか! 最初からそばを出せば、洗い物も一つで済むものを……人間というのは、つくづく回りくどい生き物じゃな。
回り道をするのが、一番の暇つぶしってことだニャ😼
……暇つぶし、か。
図星かニャ?
ええい、わらわの暇つぶしと一緒にするでないわ! わらわの読書やこの番組は、もっとこう、高尚で――
かまぼこをつまんでるおじさんたちと、いい勝負だニャ🐾
誰がそば屋のおじさんじゃ! 頭が高いわ!
でも、もしオレがそば屋のお客だったら、注文は決まってるニャ。
ほう。おぬしなら、その「天抜き」とやらを頼むのか?
いや、オレは「板わさ」の、わさび抜きだニャ😼
板わさの、わさび抜き……?
わさびなんて辛いものは要らないニャ。魚の味だけで十分うまいニャ。
……ちょっと待て。「板わさ」から「わさび」を抜いたら、それはもう、ただの「板」ではないか!
板の上に乗ったかまぼこだニャ。最高だニャ🐾
さっきまで通ぶって語っておったくせに、頼むものが一番子どもじみておるわ!
それと、かつお節だニャ。そば屋のつゆは、分厚いかつお節を削って出汁をとるから、削りたてをそのまま一皿もらうニャ。
出汁をとる前の材料をそのまま食うな! 店主も呆れて追い出すぞ!
いい匂いがするんだから、しょうがないニャ。あ、でも天ぷらにピーマンが入ってたら、それはルルルにあげるニャ。
なっ……!? わ、わらわにそのような苦い草を寄越すでない! なぜわざわざ天ぷらにピーマンなぞを入れるのじゃ、海老だけでよいじゃろが!
野菜の天ぷらには、だいたい緑のやつが一つは混ざってるものだニャ😼
ええい、そんなもの、衣だけ剥がしてベニュにでも食わせてやるわ! ……いや、待てよ。
なんだニャ?
よく考えたら、わらわは天ぷらの衣のサクサクしたところだけが好きじゃから……『ピーマン抜き』を頼めばよいのではないか?
それだと、衣が抜かれて、むき出しのピーマンだけが出てくるニャ🐾
……そうであったな。「抜き」は主役を抜くのであったな……危うく、鉢いっぱいのピーマンを抱えるところであったわ……おそろしや……。
そば屋の品書きは、よく考えてから頼まないと危ないニャ。
まったく、たかが麺を食うだけの店に、これほど罠が潜んでおるとはな。
でも、何百年もそうやって続いてるお店があるってことは、人間はその変わらないやり方が好きなんだニャ。
ふん。流行り廃りの激しい人間界にしては、ずいぶんと殊勝なことじゃ。すぐに新しいものを追いかけては大騒ぎするのが常じゃと思っておったが。
たまには、いつも同じものがある場所に戻りたくなるんじゃないかニャ🐾
……まあ、いつも同じ場所で、同じように茶を飲む悪くなさは、わらわも知らんではないがな。……ほんの少しだけじゃぞ。
素直じゃないニャ。ま、そういうわけで、第一回の「ニャモの味見帳」はここまでだニャ。
ふん、次はわらわがぐうの音も出んほど、もっとまともな料理を持参せい! かまぼこのわさび抜きなぞではなくな!
次はまぐろの話にしようかニャ😼 それじゃあ、また次回の味見帳でお会いするニャ🐾
……ふむ、人間界の蕎麦屋とやらも、なかなか粋な品書きを持っておるではないか。かまぼこを肴に茶をすすりつつ、揚げたての天ぷらだけを汁で味わうとは、わらわも一度試してみたくなったぞ。
蕎麦屋の天ぷらは衣が厚めで、つゆがじゅわっと染みるように作られてるらしいニャ🐾 オレは天ぷらより、板わさのかまぼこの方を一切れもらいたいニャ。
かまぼこなら、元の姿は魚じゃからの。お主が目を輝かせるのも無理はないわ。今度ベニュに命じて、魔界の厨房でもその『板わさ』とやらを用意させてみようかの。ただし、お主の分にはわさびを塗らぬよう申しつけておかねばな。
おお、さすがルルル、オレの好みをよく分かってるニャ! 素材の味そのままのかまぼこ、楽しみにしてるニャ😼
ふん、お主が辛子やわさびの匂いを嗅いで、しっぽをボワッと膨らませて飛び上がるのが鬱陶しいからじゃ! ……さて、腹ごなしの話はこのくらいにしておこうかの。ここからは、溜まっておる便りをまとめてバッサバッサと斬り伏せてやる時間じゃ!
スピード裁定
お、やる気満々だニャ。それじゃあ、ここからは『スピード裁定』のコーナーだニャ! 短めのお便りを五つ、どんどん読んでいくニャよ。まずは一通目、魔界の住人からで、ラジオネーム『剪定ばさみの達人』、魔界の庭師からだニャ。「ルルルさま、こんばんは。今夜のハロウィンのために、城の庭に飾る巨大なカボチャをくり抜いて顔を彫っていたのですが、気合いを入れすぎて目と口を大きく彫りすぎ、ただのスカスカの枠になってしまいました。今から彫り直すべきでしょうか」だニャ。
これよりはわらわのお白洲である、心して聴けい! ……ふむ、庭の飾りカボチャじゃな。えーい、切り捨て御免! そのまま中に燭台を三つほど余分に押し込んで、一番明るいランタンとして城門の脇にでも据えておけ!
スカスカなのを逆手に取って、大光量にする作戦だニャ。
うむ。それに、さっきわらわが廊下から庭を見下ろした時、すでにその大穴の開いたカボチャに灯りがともっておったが、遠くから見ればなかなか豪快で悪くなかったぞ。庭師が冷たい夜風に吹かれながら一生懸命くり抜いておったのも知っておるからの……ゴホン! と、とにかく、彫り直す手間など無駄じゃからそのままでよいと申しておるのじゃ!
……今の、庭師の苦労をちゃんと見ててあげたんだニャ🐾
うるさいわ! わらわはただ、城の窓から外を眺めておったら勝手に目に入っただけじゃ! 次を読め、次を!
はいはいニャ。二通目は人間界から、ラジオネーム『靴下は左右別々』。「ハロウィンなので、黒いマントを買って家で羽織ってみたのですが、鏡を見たらただの黒いゴミ袋をかぶった人に見えました。どうすれば威厳が出ますか」だニャ。
マントに威厳を求めるな、己の背筋をピンと伸ばして顎を少し上げれば、ゴミ袋であろうと王の装束に見えるわ!
さっきマントの羽根が扉に引っかかって出られなくなった人が言うと、重みが違うニャ。
あれは扉の設計が狭すぎたのじゃ! まったく、人間どもは布切れ一枚に頼りすぎなのじゃよ。次じゃ!
三通目は、ラジオネーム『夜更かし文庫』。「秋の夜長に読書をしようと本を五冊も積んだのに、一頁目を開いた瞬間に眠くなります。どうしたらいいですか」だニャ。
そのまま本を枕にして眠れ、本というものは積んで眺めておるだけでも立派なインテリアになるのじゃ!
枕にしたら本が痛むニャよ。でもルルルの部屋にも、読んでない本の塔がいくつも建ってるニャ🐾
あれは積んでおるのではない、熟成させておるのじゃ! ……たぶん。ええい、細かいことを突っつくでない、四通目じゃ!
熟成って、チーズじゃないんだからニャ。四通目は、ラジオネーム『紅茶はミルク派』。「ルルルさま、大事な場面で噛まずに威厳たっぷりに喋るコツを教えてください」だニャ。
ふん、簡単じゃ! 万が一噛んでしもうた時は、最初からそういう古語であったかのような顔をして、さらに声を大きくして押し切るのじゃ!
さっきルルルがオープニングの雑談で『回廊』って言おうとして変な発音になってたの、まさにそれだったニャ。
わ、わらわは噛んでなどおらぬ! あれは古の魔界の……いや、喉にタルトの粉が引っかかっておっただけじゃ! よいから最後の五通目を読まぬか!
まだタルト食べる前だった気がするけどニャ。じゃあ最後の五通目、ラジオネーム『銀のフォーク』。「ハロウィンの残り物のカボチャがたくさんあります。スープとタルト以外で、一番高貴な食べ方は何ですか」だニャ。
カボチャの最も高貴な食べ方じゃと……? ふむ…… うーむ、待てよ。薄く切って油で揚げて塩を振るのも捨てがたいが、いや、それでは庶民のおやつめいておるしのう。かといって、ただ蒸してバターを乗せるだけでは芸がないし……うーむ、飴をからめて大学芋のようにするか……?
ルルル、これスピード裁定だニャ。めちゃくちゃ本気で献立考えてるニャよ。
だ、黙れ! 食い物の裁定に妥協は許されぬのじゃ! えーい、切り捨て御免! 厚切りにして鉄板で焼き、極上のチーズをたっぷり溶かして上からかけるがよい、これにて終わりじゃ!
最後はただの自分の好物で押し切ったニャ🐾 でもカボチャにチーズは間違いなく美味しそうだニャ。
うむ、我ながら見事な裁きであったな。……しかし、こうしてカボチャやらお菓子やらの話ばかりしておると、せっかくのハロウィン特番じゃというのに、少しばかり夜の怪しい雰囲気が足りぬ気もするのう。
怪しい雰囲気って、たとえばお化けとか幽霊の話かニャ?
そうじゃ。魔界の城には魔族しかおらぬからの、人間界で言うところの『うらめしや〜』と出てくる透けた幽霊というのは、実はあまり見かけぬのじゃよ。一度くらい、本物の幽霊とやらを捕まえて、紅茶でも淹れさせてみたいものじゃな。
幽霊に紅茶を淹れさせるって、使い方が雑だニャ。あ、でも幽霊といえば、ちょうど廊下からこっちに向かって歩いてきてるあの人、そういう話が一番苦手だった気がするニャよ……?
……おい、スタジオの前まで来たら、なんだか背筋が凍るような単語が聞こえてきたんだけど。あたしを呼びつける前に、変なものを呼び寄せるんじゃないよ。……こんばんは、ルルル、ニャモ。それと、聴いてる者どものみんなも、いい夜を過ごしてるかい。
ほほう、ヨミではないか。なんじゃ、百戦錬磨の占い師ともあろう者が、ハロウィンの作り物の幽霊ごときに怯えておるのか?
お、怯えてなんかいないさ! あたしはただ、因果の理から外れた、足のない連中が好かないって言ってるだけだよ! ほら、くだらない冗談はよして、さっさと占いの時間にしな!
ヨミの運勢ランキング
ヨミが珍しく早口だニャ🐾 それじゃあ、今夜も星の動きを見てもらう、『ヨミの運勢ランキング』のコーナーだニャ! ヨミ、よろしくニャ。
ふん、任せときな。今夜は蟹座の月が、蠍座の水星と綺麗な『引き星』を作ってる一方で、獅子座では火星と木星が重なって、その水星と激しい『せめぎ星』になってるよ。言葉や思いが真っ直ぐ届く力と、ついつい言いすぎてしまう熱さが同居してる夜さ。そこを踏まえて、第3位から行くよ。
第3位はどの星座かニャ?
第3位は、射手座さ。導き星の木星が火星と重なって、とにかく気力が満ちてくる日だよ。ただし勢い余って空回りしやすいから、今日は少し頭を使う遊びで熱を逃がすといいね。ラッキーカラーは『黄土色』、ラッキーアイテムは『パズル』さ。黄土色の落ち着いた小物をそばに置いて、パズルのピースを一つずつ埋めるみたいに、目の前のことを順番に片づけていきな。
なるほどニャ、熱くなりすぎないようにパズルでクールダウンだニャ。じゃあ、第2位はニャ?
第2位は、天秤座だよ。導き星の金星が、今まさに自分の座にあって、木星と心地よい『結び星』を作ってる。気負わずに外へ出ていくことで、いい風を掴める運気さ。ラッキーカラーは『菫色』、ラッキーアイテムは『スニーカー』だよ。靴紐をきゅっと結び直したスニーカーで軽やかに歩き出してごらん。ハンカチでも何でも、どこかに菫色を忍ばせておけば、足取りがもっと軽くなるはずさ。
ハロウィンの夜のお散歩にもぴったりだニャ🐾 そして、栄光の第1位はどの星座かニャ!
今夜の第1位は、蟹座さ! 導き星の月が自分の座のど真ん中にあって、水星と『引き星』でしっかり結ばれてる。自分が本当に感じていることを、素直な言葉にできる強い夜だよ。ラッキーカラーは『茜色』、ラッキーアイテムは『消しゴム』さ。もし余計な見栄や迷いを書き連ねてしまったら、消しゴムで綺麗に消してしまいな。夕焼けみたいな茜色のペンや表紙のノートを使えば、自分の本当の気持ちだけが残るはずだよ。
おお、なんだか前半のお便りの話にもつながるような結果だニャ! ヨミ、今夜もありがとニャ🐾
うむ、ヨミよ、今宵も淀みない星読みであったな。大儀であった。帰り道、暗い回廊の角から白い布をかぶった何かが飛び出してきても、水晶玉を投げつけるでないぞ。下がってよいぞ。
なっ……!? ちょっとルルル、脅かすんじゃないよ! ニャモ、あんたもニヤニヤしてないで、あたしが廊下を抜けるまで見送りに来てもいいんだからね! ……まったく、者どものみんな、夜更かししすぎて変なものを見ないように、いい夜を過ごすんだよ。じゃあね!
すごい早足で帰っていったニャ。ヨミ、占いの時はあんなに肝が据わってるのに、幽霊の話になるとほんとに分かりやすいニャ。
くくく、あの慌てよう、実に良い暇つぶしになったわ。……さて、ヨミをからかって笑っておったら、いつの間にか月もずいぶん高く昇っておるではないか。
ほんとだニャ、ハロウィン特番もあっという間にもうお別れの時間だニャ。今夜は仮装の話から独自の視点、カボチャの彫りすぎまでいろんな話が出たけど、ルルル、今夜の特番を締めくくる一言をお願いするニャ🐾
うむ。今宵はハロウィンの仮装にちなんで、人間界の『独自の視点』とやらや、見栄えを気にする者どもの便りをいくつも見てやったが……結局のところ、無理に他人と違う仮面をかぶろうとするから、話も暮らしもややこしくなるのじゃ。奇をてらった切り口など探さずとも、自分の足で立って、自分の目で見た『当たり前』を、そのまま素直に語ればよい。カボチャの穴が大きすぎたなら、そのまま明かりを灯せば、それが今宵のお主だけのランタンになるのじゃよ。
……ふふ、今夜のルルルの言葉は、カボチャのタルトみたいに甘くて温かい味がしたニャ🐾
……ふん、タルトが甘かったのは、ベニュが砂糖を惜しまず使ったからに決まっておろうが。ほれ、茶がすっかり冷めてしもうたではないか。あのふかふかのマントの上で丸まっておらんで、お主も少しは片づけを手伝わぬか。
猫の手は借りても役に立たないって、人間界の言葉にもあるニャよ😼
という訳で、今日はここまでニャ。リスナーのみんな、今日もお付き合いありがとうニャ
者ども、苦しゅうない。また良き暇つぶしを送って来るがよいぞ。
またニャ〜🐾