影の模様替え
本日の格言:自分の影くらい、たまには脱ぎ捨てて遊ぶがよい
ネザーエフエム、666.6メガヘルツ。ETERNARADIO、ルルルさまの暇つぶしの時間じゃ。座っている椅子の布地が少し擦り切れておるのが気になってな、絨毯ごと張り替えさせようか思案しておったところじゃ。実に退屈な夜よ。
オレの昼寝用の毛布も新しくしてほしいニャ🐾
ならぬ。あれはお主の毛玉がほどよく馴染んでおるからよいのじゃ。……それで、今日はどのような戯言が届いておるのじゃ?
今日は魔界からお便りが届いてるニャ。読むニャ。
ほう、わらわの領民からか。どれ、聞かせよ。
『ルルルさま、こんばんは。庭師のクロウと申します。毎日、庭の枯れ草を刈ったり石を並べ替えたりして暮らしておりますが、ふと足元を見ると、自分の影の形が何百年も同じ尖った形のままで、ひどく飽き飽きしてしまいました。何か良い工夫はないでしょうか』とのことだニャ。
影の形に飽きた、じゃと?
毎日同じだと模様替えしたくなる気持ちはわかるニャ。
たわけたことを。影など、ただ光を遮った残骸にすぎぬではないか。
切り捨てたニャ。でも庭師さん、真面目に困ってるみたいだニャ。
真面目に悩む場所がズレておるのじゃ。そもそも影の形が変えられぬと思い込んでいること自体が、頭の固い証拠よ。
影って、自分の体のかたち通りにしか映らないものじゃないかニャ?
何を言うか。魔界の影など、その気になれば切り離して畳んで箪笥にでも仕舞い込めるわ。
そんな雑にしまえるものニャ?
わらわなどは退屈しのぎに、己の影にマントを持たせて荷物運びをさせることすらあるぞ。言うことを聞かぬときは足で踏みつけて黙らせるのじゃ。
影に人権ならぬ影権はないのかニャ……😼
形が気に入らぬなら、ハサミで端を丸く切り落とすか、コウモリの羽でも継ぎ足して縫い付けてしまえばよい。
手芸感覚で影を改造する気かニャ。
そうじゃ。なんならその辺の毒キノコの影を拝借して、頭の上に被ってみるのも一興であろう。傘の代わりくらいにはなるかもしれんぞ。
キノコの影をかぶった庭師、ちょっと見てみたいニャ🐾
だいたい、影が何百年も同じ形ということは、そやつ自身が何百年も同じ姿勢で突っ立っておるということじゃ。石像でもあるまいし、たまには奇妙な格好で跳ね回ってみたらどうなのじゃ。
枯れ草刈りながら変なポーズする庭師ニャ。
そうすれば勝手に影も歪んで、見たこともない珍妙な形になるではないか。影が退屈なのではなく、そやつの動きが退屈なだけじゃ。
言われてみれば、影は自分を映す鏡みたいなものだニャ。
己の輪郭に縛られて縮こまっておるから、影まで息苦しそうにするのじゃ。自分の影くらい、たまには脱ぎ捨てて遊ぶがよい。
脱ぎ捨てるって、どうやって戻すか知らんけどニャ。
夕暮れになれば勝手に闇に溶けて混ざるわ。探す手間すら要らぬ。……まあ、わらわの美しい影は、どんな形をしておろうとも完璧じゃがな。
自分で言うニャ。そろそろ時間だニャ。
ふん、庭師の影などどうでもよいわ。冷めた茶を淹れ直せ、ニャモ。
はいはい、オレのおやつも忘れないでニャ。
今宵はここまでじゃ。次も良き暇つぶしを送ってくるがよいぞ。
またニャ〜🐾