絡まる紐と遠くの影
この麻紐、思っていたよりずっと硬いのね。結び目をひとつ作るだけでも、指の先が赤くなってしまいそうだと思う。
植物の蔓を乾燥させたやつだからな💡 ほら、そっちの端っこをしっかり押さえててほしいんだな。今からこの金具をねじ込むから!
うん、ここを持っていればいいのね。……そういえばね、昨日、天界の庭の端っこから下を眺めていたら、四角い箱をいくつも積んだ車が、細い道をゆっくり走っていくのが見えたの。
あっ、ちょっと動いた! 紐がずれちゃうんだな🔧 ……荷物の配達車かな。最近の地上は、頼めば何でも運んでくれるらしいからな。
そうなのかな。あの車、曲がり角のたびに一度止まって、誰もいないのに小さく合図を出していてね。なんだかとても丁寧で、見ているだけで少し安心したの。
ルールを守る機械って健気でいいよな。よし、金具は通った! 次はその束を三つ編みにしていくんだな。ええと、右を真ん中に、左を真ん中に……あれ、どっちが上だっけ?
ふふ、シャトの手元、さっきから同じところを行ったり来たりしているよ。右の紐を、真ん中の下から通すの。
うっ、手作業の編み込みはやっぱり苦手なんだな……! 頭の中では完璧に編み上がってるのに、指が別の動きをするんだな⚡
頭の中の形と、実際に手で作る形には、どうしても少しだけ隙間ができるものね。その隙間を埋めようとする時間そのものが、物を作ることなのかもしれない。
おお、それ深いな✨ メモしたいけど今手を離すと全部ほどけるんだな! 燈、その右のやつを引っ張ってくれ!
はい、引っ張ったよ。……あ、でも強く引きすぎたかもしれない。少し形がいびつになってしまったの。
全然平気なんだな! 多少の歪みがあったほうが、引っ掛けるときに滑らなくてちょうどいいんだな。まあ、こういう雑なリカバリーをするのは、わたしくらいなんだな。
道具って、使う人の手の癖に合わせて馴染んでいくものね。完璧に整っていることだけが、正しさではないのだと思う。
そうそう! だからこの歪みは仕様なんだな💡 ……ところで燈、その三つ編みの先、もう一本足さなきゃいけないんだけど、足元にある緑色の紐取ってくれるか?
緑色の紐ね、取……わっ、まって、シャト、この紐の端っこ、何か動いていない?
ん? どれどれ? ……ただの解けた繊維の毛羽立ちに見えるけどな?
本当……? 足が何本か生えているように見えて、すごく怖かったの。もし動くものだったら、燈、この部屋から飛び出してしまうところだったよ。
あはは、ただの繊維の塊なんだな! 燈は本当に小さい生き物が苦手なんだな。ほら、ちゃんと動かない紐だから、こっちに渡してほしいんだな。
よかった……。はい、どうぞ。本当に、心臓が跳ねてしまったもの。
よし、受け取った! これで最後の留め具をカチッとはめれば……よし、できたんだな✨ 天井から吊るすタイプの、道具入れネットの完成なんだな!
編み目は少しでこぼこしているけれど、とても温かみがある形になったね。部屋の空気が、少し柔らかくなったような気がするの。
うん! ワーハの壁にぴったりなんだな。さっそくこの余ったペンとネジを入れて……あ、燈、その虹色の髪留めも、外したときはここに入れておけば失くさないんだな?
これね。これは、いつも身につけているから大丈夫なの。とても気に入っていて、外すことはあまりないから。
そっか。まあ、大事に使ってくれてるなら何よりなんだな。……さ、次は散らばった紐の切れ端を片付けないと、足の踏み場がないんだな!
ふふ、そうね。箒を持ってくるから、シャトは床の細かい金具を集めてもらえる? 一緒にやれば、きっとすぐ終わると思う。