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小枝を束ねる午後

2026年10月16日 ・ 燈 × ニャモの雑談
燈

ニャモ、そっちの麻ひもを少し短めに切って渡してくれる? 庭のハーブを干すのに、ちょうどいい長さに揃えたいの。

ニャモ

ほらよニャ🐾。これくらいでいいかニャ。

燈

ありがとう、助かるよ。三本ずつまとめて、こうして根元のほうを縛っていくの。そういえばさっき、広場のベンチのところで、人間がふたり、小さな四角い箱を交代で覗き込んでいたんだよ。

ニャモ

オレは次の紐を切ればいいのかニャ。その箱、何か光ってたかニャ?

燈

ううん、光っていなかったと思う。黒くて丸い筒がついた、少し古そうな形の箱だったの。片方の人が立ち止まってポーズをとって、もう片方が息を止めるみたいにして構えていてね。あ、ニャモ、その茎はまだ水分が多いから、もう少し細い束に分けてほしいな。

ニャモ

了解だニャ。……写真を撮る機械だニャ。地上じゃよくある光景だニャ。

燈

やっぱりそうなんだね。なんだかとても真剣な顔をしていたから、何をそんなに見つめているんだろうって、少し気になってしまって。ただ景色を写すだけじゃなくて、その瞬間の空気ごと閉じ込めようとしているみたいに見えたの。

ニャモ

残しておきたいものがあるんだろニャ🐾。オレたちにはよく分からん執着だニャ。

燈

執着……そうかもしれないね。でも、消えていってしまうものを留めておきたいと願うのは、とても人間らしい祈りのかたちなのだと思う。あ、待って、この葉っぱの裏……何もいないよね? 黒い粒が見えるんだけど、土だよね?

ニャモ

ただの土だニャ。虫じゃないから手を止めるなニャ。紐がほどけかけてるぞニャ。

燈

よ、よかった……びっくりした。土なら平気。ぎゅっと結び直すね。それでね、そのふたり、撮り終わったあとに顔を見合わせて、すごく嬉しそうに笑っていたんだよ。何を話していたのかまでは聞こえなかったけれど。

ニャモ

笑ってたなら上出来だろニャ。ほら、次の束を寄越すニャ。オレが端を押さえててやるニャ。

燈

うん、お願い。ここをしっかり押さえていてくれると結びやすいの。ふたりで同じものを見て、同じように納得できるって、当たり前のようでいて、本当はとても奇跡に近いことなのかもしれないな。

ニャモ

大げさだニャ。……あ、おい燈、紐の端っこ、変な結び目になってるニャ。

燈

あ、本当だ。話しながら手元を見ていなかったから、絡まっちゃったみたい。ほどけるかな……ちょっと爪で引っ張ってみるね。

ニャモ

無理に引っ張ると余計に固くなるニャ。貸してみろニャ、爪で突っつくからニャ🐾。

燈

器用だね、ニャモ。助かっちゃった。……ねえ、あの人たちは、今日撮ったあの箱の中身を、何年もあとにまた見返したりするのかな。

ニャモ

さあニャ。すぐ忘れて別のものを撮るかもしれないし、ずっと大事に持ってるかもしれないニャ。どっちにしろオレたちの知ったことじゃないニャ。

燈

ふふ、そうだね。でも、いつか見返したときに、あの日の風が少し冷たかったこととか、隣にいた人の手の温度とかを、思い出せたら素敵だと思うんだよ。

ニャモ

風の冷たさくらい、今ここで肌で感じてれば十分だニャ。ほら、もうこの束で最後だニャ。しっかり結べニャ。

燈

はーい。これで全部まとまったね。軒下に吊るして、風を通しておこうか。今日のうちに終わってすっきりしたよ。

ニャモ

終わったならオレは日向に移動するニャ🐾。紐の端を噛んでたら、あごが疲れたニャ。

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