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紐を解く指先

2026年9月24日 ・ 燈 × ルルルの雑談
ルルル

おい、燈。そなたの側のその紐、結び目が固すぎて指が入らぬのじゃが。力任せに引いたな。

ごめんね。縛るときに解けないようにって思ったら、少しきつく締めすぎたみたい。この端っこを少し押し戻すと、隙間ができると思うよ。

ルルル

……む、本当じゃな。少し緩んだ。まったく、古紙を束ねるだけなのに、なぜこれほど頑丈に括る必要があるのじゃ。誰かが奪い去るような宝物でもなかろうに。

運ぶ途中で崩れたら大変だからね。あ、その紐は切らずにそのまま巻き取っておいてほしいな。また何かに使えるかもしれないもの。

ルルル

物を溜め込むのはそなたの悪い癖じゃ。……そういえば先刻、外の広場を通りかかったとき、妙なものを見たのじゃ。

妙なもの? どんなものだったの。この束を横に倒すから、そっちの角を持ってくれるかな。

ルルル

うむ、ここを持てばよいな。……人間が二人、四角い金属の板を挟んで立ったまま、一言も口を利かずに同じ姿勢で固まっておったのじゃ。微動だにせず、ただ板の表面を交互に睨みつけておった。

ふふ、それはきっと、携帯端末の画面で何か真剣な相談をしていたんじゃないかな。ほら、声に出せないような大事な連絡とか。

ルルル

声を出せぬ事情など、わらわには理解できん。言いたいことがあるならば、腹から声を出して伝えれば済む話じゃろうに。あの様子では、まるで互いの影を観察している置物のようであったぞ。

言葉にすると角が立つことでも、文字にして並べると、少しだけ静かに受け止められることがあるのかもしれない。道具を挟むことで、お互いの距離を測り直しているのね。

ルルル

回りくどいことじゃ。……む、燈、そなたの手が止まっておるぞ。この端を折らねば、次の束が入らぬではないか。

あ、本当だ。ごめんね、考え事をしてたら指が止まっちゃった。ここをこうやって平らに均せば大丈夫だと思う。

ルルル

まったく、手元がおろそかになっておる。……だが、文字にすれば角が立たぬ、というのは一理あるかもしれんな。昔も、顔を合わせれば刃傷沙汰になるような連中が、書状のやり取りだけは慇懃無礼に続けておったのを見たことがある。

会って話すと、表情や声の調子で余計な感情が伝わってしまうこともあるものね。姿が見えないからこそ保てる平穏も、きっとあるのだと思う。

ルルル

平穏というよりは、ただの先延ばしに見えたがな。結局は最後に戦場で顔を合わせて、余計に激しく衝突しておったわ。文字の礼儀など、ただの薄氷に過ぎんのじゃ。

そうかもしれないね。でも、その薄氷の上でしか息ができない瞬間も、人にはあるんだよ。……あ、ルルル、そっちの紙の端が少し破れそう。

ルルル

……おお、いかん。話に気を取られて、力が入ってしもうた。破れてはおらんが、少し筋が入ったな。

これくらいなら大丈夫。どうせ紐でまとめて出してしまうものだし、気にしなくていいよ。

ルルル

ふん、わらわがしくじったわけではない。この紙が脆すぎるのじゃ。……しかし、あの広場の二人は、最後には互いに頷いて別々の方向へ歩いていったぞ。争う気配は微塵もなかった。

それならよかった。きっと、ふたりの中でちゃんと納得のいく答えが見つかったんだね。声のないやり取りでも、ちゃんと通じ合えるものなんだな。

ルルル

通じたのかどうか、端から見ている分にはさっぱり分からんがな。人間というものは、いつの時代も面倒な儀式を好むものじゃ。ほれ、この紐をそちらへ回すぞ。受け取れ。

うん、ありがとう。これで最後の束も綺麗にまとまったね。

ルルル

ふう、ようやく終わったか。指先に紙の粉がついて少し乾くのじゃ。終わったのなら、冷たい茶でも淹れてもらおうか。

そうだね。手を洗ったら、すぐに用意するよ。ルルルも手伝ってくれて助かったな。

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