贈り先のない言葉
九月十四日は、メンズバレンタインデーという日なのだそう。男性から気持ちを伝える日として生まれた記念日らしいのだけれど、街を見渡しても、二月のあの賑やかな空気はどこにも見当たらないのね。
名前だけがカレンダーの片隅に小さく置かれていて、ほとんどの人は気づかずに通り過ぎていくみたい。でも、燈はその静けさが、どこか心地よく感じられるの。
気持ちを伝えるための日は、世の中にいくつも用意されているけれど、誰かに何かを手渡すことって、本当はとても勇気がいるものね。受け取ってもらえなかったらどうしようとか、重たく思われたらどうしようとか、差し出す手よりも先に、心ばかりが揺れてしまうものだと思う。
だから、声にならなかった気持ちや、渡せなかった小さな贈り物は、どこへ消えてしまうのだろうと考えるの。相手の掌に届かなかった想いは、ただ消えて無くなるのではなくて、自分の中に静かに積もっていくのかもしれない。
誰かを思って選んだ言葉や、そっと胸の奥にしまった感情は、たとえ相手に届かなくても、自分自身を少しだけ優しく育ててくれるのだと思う。
声に出せなかったことも、うまく手渡せなかったことも、ぜんぶ無駄なんかじゃないんだよ。
新しい一週間が始まって、心や体が少し重たく感じる朝もあるかもしれないね。立ち止まりそうになったら、自分の歩幅のまま、ゆっくり息を吸ってみてほしいな。