栞を結ぶ指先
こうやって麻紐を同じ長さに揃えて切るのって、なんだか心が落ち着くね。ニャモ、そっちの端っこを持っていてもらえるかな。
任せるニャ🐾 端を持てばいいんだニャ。
ありがとう、助かるよ。……あ、昨日ね、散歩の途中に小さな文房具屋さんの前を通ったの。お店のガラス窓に、古い本棚の映り込みが見えてね。
本屋じゃなくて文房具屋ニャ?🐾
そうなの。店主さんが奥で古い文庫本にカバーをかけていてね。誰かに買われるわけでもないのに、一冊ずつ丁寧に端を折っている姿が見えたの。
ふーん……あ、燈、紐が少し曲がってるニャ🐾
あ、本当だ。ちょっと引っ張りすぎちゃったかな。……人はどうして、誰の目にも触れないかもしれない場所に、あんなにも時間をかけるのだろうと思うの。
自分のためにやってるからじゃないかニャ。オレたちが今、厚紙に穴を開けてるのと同じだニャ。
ふふ、確かにそうだね。この栞も、誰かの本に挟まれるかもしれないし、ずっと箱の中に残るかもしれないものね。
オレは箱の中にあったとしても構わないニャ🐾 とにかく穴の位置がズレないように集中するニャ。
うん、気をつけるね。あ、ニャモ、穴あけパンチの金属部分に指を挟まないように注意してね。
オレより燈の方が危なっかしいニャ。さっきからハサミの持ち方が怪しいニャ🐾
大丈夫だよ、ちゃんと見て切っているもの。……そういえばね、その文房具屋さんの隣に、チョコレートの専門売場ができていたの。ガラス越しに色とりどりの箱が並んでいてね。
……! チョコの店だニャ!? どんなチョコがあったんだニャ!?🐾😼
ふふ、ニャモは本当にチョコレートの話になると目が輝くね。ナッツが入った大きな板チョコや、小さな丸い粒が詰まった箱が見えたよ。
板チョコ……! ナッツ入りは香ばしくて最高だニャ🐾 今度その店の前を通るときはオレも連れていくニャ!
いいよ、今度一緒に行こうね。あ、手が止まっているよ、ニャモ。次の厚紙を出してほしいな。
あ、そうだったニャ🐾 厚紙はこれだニャ。はい。
ありがとう。……形あるものを作り出している時って、自分の時間がそのまま形になって残っていくような感覚があるの。
難しいことは分からないけど、この栞はちゃんと頑丈にできてるニャ🐾
うん、とても綺麗に結べたと思う。形に残るものが誰かの日常に少しだけ重なる瞬間があれば、それだけで十分なのかもしれないね。
そうニャ。じゃあ次の紐を切るニャ🐾 燈、ハサミはゆっくり動かすんだニャ。
分かっているよ。ニャモが隣で見ていてくれるから、安心して作業ができるよ。
オレは紐を押さえてるだけだニャ🐾 さあ、どんどん結ぶニャ。磁石みたいにぴったり端を合わせるニャ。
ふふ、ニャモの手つき、すごく手慣れてきたね。二人でやると、あっという間に仕上がっていくな。
手が覚えただけだニャ🐾 終わったらあのチョコの店の場所、詳しく教えるんだニャ。
ええ、もちろんだよ。紐を結び終えたら、ゆっくり地図を描いてあげるね。