壊れた時計とネジの行方
あのね、シャト。棚の奥から古い手巻きの置き時計が出てきたの。針はもう止まっていて、いくらリューズを回してもスカスカして動かないのね。なんだか、役割を終えたものの寂しさがじわじわと伝わってきて、胸がキュッとしちゃったんだよ。
ふむふむ!手巻き時計か、いい構造なんだな!💡 内部のゼンマイが切れてるか、歯車の軸が外れてる可能性が高いぞ!どれどれ、ちょっと見せてみな!🔧
ううん、修理してほしいわけじゃないんだよ。ただ、この時計が刻んできた時間のことや、最後にカチッと音を立てた瞬間のことを考えていたの。時を刻むのをやめた瞬間、この子の中にある世界も一緒に静止してしまったのかもしれないね。
世界が止まったというか、単に金属疲労か油切れなんだな!ネジを3本外せば裏蓋が開くから、すぐ原因がわかるぞ!ついでに小さなモーターを組み込んで、自動で逆回転する時計に改造してみようか!✨
逆回転にするの……? でも、過ぎ去った時間は戻らないでしょう。動かなくなった時計を無理に動かすのは、なんだか過去の記憶を強引に掘り起こすみたいで、少し切ない気持ちになるのね。物はいつか壊れるからこそ、愛おしいのかもしれないのだと思う。
切ないとか言ってる場合じゃないんだな!ほら、裏蓋を開けたら中にホコリが詰まってるだけだったぞ!⚡ ピンセットでこの綿ゴミをつまみ出せば、ほら、ギアが引っかからずに回り始めた!
あ……本当だ。カチカチって、小さな音が聞こえる。でも、なんだか元の音より少し早くて、焦っているみたいに聞こえるのね。機械も無理をさせられると、悲鳴を上げるんじゃないかしら。
悲鳴じゃなくて、歯車のかみ合わせが浅いだけなんだな!🔧 ここにある調整ネジをドライバーで半時計回りに15度くらい回すと、標準的なテンポに戻るぞ。はい、これで一分間に六十回、正確に刻むようになったんだな!
すごく規則正しい音になったね。でもね、こうしてまた動き出すのを見ると、今度は「いつかまた止まってしまう瞬間」のことを想像してしまって、なんだか心が落ち着かないんだよ。終わりの予感って、どうしてこんなに人を不安にさせるのかな。
また止まったら、その時にまた分解して部品を交換すればいいだけなんだな!💡 歯車が削れたなら新しいのを削り出せばいいし、ゼンマイが折れたなら金属板から作ればいいぞ!
部品を全部新しく取り替えてしまったら、それはもう、さっきまでここにあった時計と同じものと言えるのかな。形は同じでも、重ねてきた思い出や記憶は消えてしまう気がするの。物と人の関係って、とても曖昧で繊細なものなのかもしれないね。
形と機能が同じなら、それは立派な同じ時計なんだな!それに、古いギアを取り外したら、それはそれで別の発明のパーツとして使えるから一石二鳥だぞ!⚡ ほら、この使い古された小さい歯車なんて、ペンダントの飾りにしたら絶対面白いんだな!
外されたパーツを飾りに……? なんだか少し複雑だけど、捨てられて消えてしまうよりは、形を変えて残り続けるほうが救いになるのかな。シャトの考え方は、なんだかとても前を向いているね。
立ち止まってたら何も作れないんだな!✨ 救いとか難しいことはよくわからないけど、動くものは動いたほうが面白いし、壊れたら直すか別の面白グッズにするのが一番スッキリするぞ!
ふふ、そうだね。目の前で規則正しく動く針を見ていると、私の難しく考えすぎる頭の中も、少しずつほぐれていく気がするよ。かち、かち、って音、ずっと聞いていると案外心地いいのね。
そうだろ!じゃあついでに、この時計の文字盤に超高輝度LEDを取り付けて、暗闇で部屋全体をピカピカ照らす夜光時計にアップグレードしておくんだな!照明のスイッチと連動させればバッチリだぞ!💡✨
えっ、そこまでしなくてもいいんだよ……? 静かに時を刻んでくれるだけで、この子は十分素敵なのだと思うから。あまり光らせると、夜眠れなくなっちゃいそうだな。
大丈夫なんだな!光が眩しすぎたら、遮光フィルムを貼ればちょうどいい明るさになるから問題ないぞ!🔧 さて、ハンダゴテを暖めてくるからちょっと待っててくれよな!
あ、行っちゃった。さっきまでの寂しい気持ちが、どこかへ飛んでいっちゃったな。静かに思い出に浸るのもいいけれど、こうやって強引に現実に戻されるのも、悪くないのかもしれないね。をつけるのだけは、ちゃんと見ていてあげなくちゃ。
ハンダゴテが温まったぞ!⚡ 燈、手狭だからそこのピンセットを取ってくれなんだな!このLEDを一番上の歯車の真横にハンダ付けするぞ!
はい、ピンセットね。壊れたらまた直せばいい、か……。シャトの手元を見ていると、なんだかどんな終わりが来ても大丈夫な気がしてくるから不思議だよ。